最近、選任された役員の氏名に加え、役員の住所も記載されている株主総会議事録を見かけることがある。これは、平成27年2月27日に改正商業登記規則が施行されて以降の現象である。

 改正後の商業登記規則61条7項は、新任の取締役等の就任の登記には、就任を承諾したことを証する書面に記載された氏名及び住所について、同一の氏名及び住所が記載された本人確認書類を添付しなければならないとしている。

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 一方で、株主総会議事録に「就任を承諾した」との記載があれば株主総会議事録を、就任を承諾したことを証する書面として援用することができるとされている。

 以上のことから、株主総会議事録をもって就任承諾を証する書面として援用するためには、株主総会議事録に本人確認書類に記載された氏名及び住所を記載しておけば、別途就任承諾書を添付する必要がないということになる。

 株主総会議事録に新任役員の氏名及び住所を記載するのはそのためかと思われる。

 しかし、そうしたやり方には違和感を感じる。

 株主や会社の債権者はいつでも株主総会議事録を閲覧することができるとされている(会社法318条4項)。一方、取締役会議事録は、株主は、その権利を行使するため必要であるときは、いつでも閲覧を請求することができるとされている(会社法371条2項)。つまり、会社の債権者は、取締役会議事録は裁判所の許可がなければ閲覧を請求することはできないが(会社法371条6項)、株主総会議事録はいつでも閲覧を請求することができるのである。

 ところで、株式会社の内容を公示している登記情報では、代表取締役の住所は公示しているが、代表権を持たない取締役や監査役については氏名のみを公示し、住所は公示していない。

 そうすると、株主総会議事録に取締役や監査役の住所が記載されていると、会社の債権者は、株主総会議事録を閲覧することにより、登記情報では公示されていな取締役や監査役の住所を知ることができるということになってしまう。
したがって、株主総会議事録に取締役や監査役の住所というセンシティブな情報を記載することに慎重にならざるを得ない。

 もちろん、会社の経営に携わる者が住所を明らかにするのは当たり前であるとか、役員個人の責任が追及されるのは限定的な場面しかないのであるから実質的には問題ないという意見もあろう。

 しかし、センシティブな情報を登記手続きの利便性のためだけに議事録に記載することの是非について、敏感になるべきであると思う。